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12　どうしたらいい？【デイヴィス視点】

「おいおい、どうした？　また飲んでいるのか？」「違うんだ、僕は……僕がローザに……」

ロベルトは「ああ……」と憐れむような声を出す。

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「そうか、ローザ夫人はお前にしつこくまとわりついてくるんだっけ？　任された仕事もろくにできない、社交もしない。外から見る分にはいいけど、性格は最悪、だったっけな？　違ったか？　そんな風には見えないが、執着女が妻だなんてお前もつらいよな」

ローザに蔑むような視線を送ったロベルトの襟首を、気がつけば僕は締め上げていた。

「なっ！？　やめろ、デイヴィス！」

腕を払われても、ロベルトへの怒りはおさまらない。

「ローザを侮辱するな！」

ロベルトは咳込みながら「は？　侮辱って……俺はお前が前に言っていたことを言っただけだぞ？」と驚いている。

そうだ、ローザを侮辱していたのは僕自身だ。ローザを蔑んでいたのも僕。

「違うんだ……。ローザは、そんな人じゃない……」「なんだかよくわからんが、お前がローザ夫人のことで、追い詰められているのだけはわかったよ。俺も婚約者のワガママにいつも振り回されているからな。まぁ彼女の場合は、そこが可愛いんだが」

ロベルトは慰めるように僕の肩をポンッと叩いた。

「お前たち、結婚何年目だ？」「……三年目だ」「じゃあ、あと二年の我慢だな」「二年？」

訳がわからずロベルトを見ると、ロベルトは「そう、二年だ」とくり返す。

「五年たっても夫婦間に子どもができなかったら離婚できるからな。あと、二年我慢すれば、お前は晴れて自由の身だ」

「良かったな」と肩を叩かれ、僕はそのままフラつき、バルコニーの柵にもたれかかった。

「に、二年の間に子どもができなかったら……離婚？」

この離婚は、夫から申請されることがほとんどだが、まれに妻から申請されることもある。だから、二年後にはローザから離婚を申請することができてしまう。

「い、嫌だ！　ローザと離れるなんて、そんなの！」「は？」

「僕は彼女を愛しているんだ！　僕が間違っていた！　どうすればいい！？　どうすれば、また彼女に愛してもらえるんだ！？」

「お、おい、デイヴィス？」

戸惑うロベルトに僕は泣きついた。

「お願いだ！　どうしたらいいのか、教えてくれ！　このままじゃ、ローザに捨てられてしまう！」「はぁ？　とりあえず、話をしてみろ。聞いてやるから」

そういうロベルトに、今までローザにしてきたことをすべて話すとロベルトは青ざめた。

「ロベルト、どうしたらいい？　助けてくれ！」「あ、その……」

ロベルトは視線をそらしてこちらを見てくれない。

「なんというか……もし俺が女だったら、お前を思いっきりぶん殴っていただろうな」「殴られるくらいで許してもらえるなら、何度だって殴られるから！」

困った顔をしたロベルトに「いや、今さら無理だろう……」とため息をつかれてしまう。

「女は気持ちが冷めたら、二度と戻って来ないって、俺の婚約者が言っていたぞ」

ポンッと優しく肩を叩かれた僕は、思わずその場にうずくまった。足元にあるはずの床がガラガラと崩れていくような気がする。

「あ、ローザ夫人、誰かと踊るみたいだな」

ロベルトの言葉に弾かれたように顔を上げた僕は、ロベルトが止めるのも聞かず走り出していた。